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DIGITABLE 第6回勉強会レポート

2007 年7 月21 日 於:本諏訪写真事務所(平河町)


  サマースクール1「夏季特別移動教室:本諏訪スタジオ編」         担当:本諏訪功
   “ネットショップにおけるアクセサリー商品撮影:実践編”           協力:山口明夫
  事例研究:仕事の現場から
      「自動車メーカーカタログ用ロケ撮影と画像処理の実際」
       担当:高木大輔


★サマースクール1「夏季特別移動教室:本諏訪スタジオ編」

毎月、初級+事例研究+アドバンスと回を重ねた当勉強会も、現役の学生さんに習って?夏休み期間中は特別授業。今月は“移動教室”と称していつもの下町界隈を離れてちょっとだけ遠征です。APAの中堅会員として活躍中の本諏訪氏のスタジオをお借りすることになりました。おりしも一週間後に参院選挙を控えた、政局のお膝元ともいうべき永田町界隈ですが、土曜日の午後は以外にも閑散として落ち着いた雰囲気。懸念された“迷子”も出さずに無事終結したいつものメンバーにより、いつもとちょっと違った授業が静かに始まりました。

● セッティング

プロのスタジオでの授業とはいえ、「プロ機材で撮ってしまっても、却って皆さんの参考にならないのでは…?」との本諏訪氏の案により、セッティングの機材は基本的に山口氏が実際に自宅で使用中のものを持ち込んでいただきました。(ご苦労様でした)
メイン光源として40cm角の蛍光灯40WRIFAライト+40cm角デフュージングBOX、サブライトには小型の乾電池式ライトビュアーを転用という、アイデアあふれる構成でなかなか使いやすそうです。カメラは先月のレポートでも紹介したとおり、リコーのCaplioGX100。2×3フォーマットと1×1フォーマットがワンタッチ切り替え、撮影直後に液晶モニター上で3枚並べて比較可能などの利点が多く、また軽量化であることが一番のきめてとなった…と先月の報告にありましたが、概ねその良さは実感できました。画像の撮れ具合も期待を裏切らないものでGood!ただこうなってくると人間欲深いもので、三脚にセットしっぱなしで“大の男”が作業するには小さすぎるんじゃないか?などと、外野席での声もありました。

● 撮影の実際
実際の撮影に移り、本諏訪講師の第一の指摘ポイントはメインライトのRIFAの角度。基本的に限りなく逆光に近い状態にセットし、目視によりそれを起こしていくのを確認すること。またこのサイズの撮影なら乾電池式ライトビュアーも補助光としてきわめて有効で、ベストの位置や強さ(この場合は距離で調整)を得るためモニタで確認しながら、片手で操作・保持するのが有効ではないか?とのことでした。
全体の光源の色温度が揃っていて、強弱のバランスがとれていれば、小型機材での光量不足も充分補えるとの事でした。
●トルソ撮影
アクセサリーの撮影では実際の“装着写真” として、トルソ(人体のボディモデル=マネキンの胴体ですね)を使った撮影も有効との事で、実際に使っているトルソもお持ちいただきました。撮影商品が大型化すれば、セットや照明機材も大型化するのが原則ですが、今回は同一のRIFA1灯で撮影にチャレンジしました。
ここでのポイントはトレペを利用して発光面を広げること。被写体と同じくらいの面積の光源が理想だそうです。問題は発光面を広げるほど、反比例して光量が落ちるのですが、ここでも光の質(=色温度)が揃っていれば、シャッター速度でカバー。
もちろんカメラを保持するのに充分な三脚とカメラボディに振動を伝えないためのレリーズ等は必定になります。



機材は基本的に山口氏が実際に自宅で使用中のものを
持ち込んでいただいた


熱心な会員に囲まれ、シャッターを押す本諏訪功講師


リコーCaplioGX100による撮影風景と、
そのモニタ部の拡大


素直で見やすいモニタとスタジオ撮影にも使いやすそうな
情報表示。このモニタがでかければ言うことなし?!


続いて同一ライトを使ってトルソを使った撮影にも
チャレンジ。光が弱くなってもトレぺ等で面積を広げること
●まとめ
本諏訪講師の指摘通り、最小限の機材でもそれらを充分に生かしきることが重要なのがよく分かった。機材の投資額の対費用効果も勿論だが、家庭などの環境で多くの機材を揃えたところで労力もスペースもどんどん食われて、却ってやりづらく本末転倒になりかねない。
被写体に応じた光源の面積を作り出すにも自由にライトが移動できる空間が必要で、機材や設備の無いものねだりに陥ってはいけないのだ…。
改めて“Utility Minimam”の精神が肝要、と自戒する一日であった。



作例写真の一例 これらは当日撮ったままの“未調整”画像であるが、後日これらの調整についても検討したい


事例研究:仕事の現場から
「自動車メーカーカタログ用ロケ撮影と画像処理の実際」

スタジオでの移動教室とはいえ、基本の座学もしっかりおこなうのがDIGITABLE。高木講師により、6月に行われた自動車メーカーでの1マンロケ撮影の要点と、その後ボディカラーのバリエーション展開やバック背景との合成作業など、カタログ完成までの作業の実際が報告された。
会場では実際に(印刷されて)完成したカタログを前に授業が行われたが、クライアントの秘守義務もあり、残念ながらここでは実際の写真は省いて概要のみ報告する。

作例写真を並べて解説する高木大輔講師
●合成を前提とした撮影〜処理ワークフロー
商業写真の原則として、“撮ってから”ではなくて“撮る前に”考え問題を抽出する。
デザインや予想される背景素材に合わせて
○パース、○画角、○色調、○ 光(方向性)
などに充分な注意を払って撮影する。いずれにしても、カラーチャートの写しこみは必定である。
これらを前提に基本的な色調補正(木々の背景に合わせるから緑っぽく…等)はもちろん、パースの微調整までもRAW現像時に一気に行うのが高木流。これにより作業の効率化はもとより、後工程でのレタッチソフトの操作による画像の劣化が最小限に抑えられ、一眼レフデジタルカメラの画質ポテンシャルが最大限活きる。
尚、カタログ見開きやポスター等画像解像度の拡大が必要な場合も同様に、この段階で一気に拡大描き出し処理してしまう。
実際のPhotoshopでの合成作業は切り抜きと影付け、なじませ作業がほとんどであり、かなりスピーディである。

●撮影の実際 
1マンでのロケ撮影のため機材も工程も最小限を基本に考える。まず画角と構図に集中し、次に後工程で問題になりそうな欠点を見つけ出し作業を集中する。すなわち、○暗くつぶれそうな部分、あるいはトビそうな部分、○切抜きで問題になりそうな部分、○部分的に色カブリしそうな部分…等である。
非常手段ではあるが、写りこみの処理が出来そうもないフロントガラスには最初から空を写しこんでしまう。あるいは工場内のブルーシートをバックに利用して切抜きの効率化を図り、多少の全体のブルーかぶりは気にしない。後工程でグリーンかぶりに転調し、木々の背景になじませる…等など、実践経験豊富なプロならではの“現場の技”が披露された。




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